翻訳/編集:(株)マクドナルド商会/横浜
先週のこと、ある発電所のお客の1人がいきり立った様子で私どもに電話してきました。コアレサー・エレメントが破れ、セパレーター・エレメントはつぶれるで、発電機を回すジェット・エンジン用のフィルターが汚物で塞がってしまった、という連絡なのです。当然の事ながら、先ず、こう尋ねました。「フィルター・セパレーターでの圧力低下はどの位だったのですか?」答、「いや、それがねぇ、これまで圧力計で判るものなんて何もなかったんですねぇ。おたくのフィルタ−・エレメントは、まるで油の中にはがれ落ちて来てるみたいですよ・・・。」
この種の報告をする場合、常にフィルター・マンは極めて用心深いものでありますが、それというのも、どんなフィルターにおいても圧力低下は存在するもので、それでなければ濾過作用などあり得ない、という事を自分自身充分に知っているからなのです。事情はどこでも同じ、すなわち液体が管内を流れてポンプから遠ざかるほどに圧が低くなります。− この圧力低下はヴァルヴの一つひとつ、各メーター、そしてパイプのあらゆる基部で発生し、特にフィルターで大きいのです。たゞ、フィルターの場合はエレメントが汚れを集積するに従い、圧力損失の度合が大きくなっていきます。流通路が詰まってくるからです。 数年前、現場調査から得た資料を発表したことがありますが、その調査で判ったことは、空港で使用されている濾過器の圧力の読みが 70%も不正であった、という事実です。もっとも今日ではこの数字も幾分低くなっているでしょうが、例え 50%としてもあまり勇気付けられる話ではありませんし、大変なことに違いはありません。
話を戻して、その人が電話で言うには、彼の圧力計からは何も判らなかった、ということなのですが、これは情けないほどに小さなヴァルヴの所為、と私は9割方確信しました。フィルター・セパレーターのメーカーの中には、何故かこの小さなヴァルヴを使いたがるところがあります。これはブラス製の三方コック弁で、圧力計の下に取り付けられ、銅管によってフィルターの入口側と出口側の圧が各々ゲージに出ます。その両者の差が、すなわち圧力低下の値です。簡単ではないかって? 残念ながら、答は否です。
どんな要領で圧力低下を読んだのか、お客に尋ねましたところ、三方ヴァルヴによることが確認されました。(この時点で私は 95%どこに問題があるか判りました。)そこで、次にヴァルヴのハンドルをどう回したか聞きました。「まさか私が馬鹿か何かだと思っているんじゃないだろうね。」彼は憤慨して言いました。「たゞハンドルを回して左に合わせ、それから右に持っていっただけさ。大抵それで読みは同じだがね。」これで、私の推量していたことは 100%確実となりました。彼は圧力低下など、確かに読めなかったのです。実際には、圧力が大幅に低下していて、コアレサー本来の形が保てないほどまでに進行し、挙句の果て破裂してしまった、というところでしょう。
こゝまでお読みになれば、もう殆どの読者の方々にはその答がお判りのことゝ思います。もしかしたら、読者の多くの方々がこのヴァルヴの問題で正しい認識のないまゝ同じことをしておられるのではないでしょうか。下に掲載した写真が、今こゝで論じているヴァルヴで、図は上述の場合どのような状態になっているかを示すものです。普通、ハンドルを左に倒せばゲージの読みが得られます。プラグはL 字形の通路で圧を左入口からゲージまで導くわけですから。そこで、次にそのまゝハンドルを同じ向きに回していって、右に持ってきたとしましょう。L 字形は逆さまになって通路はゲージとつながっていません。はじめに示された圧がそのまゝゲージに閉じ込められているため、圧力低下が観察されるわけがないのです。
それならば、と次のように結論付ける人が大勢いらっしゃるのではないでしょうか。すなわち右側からの圧を読もうとする時は、ハンドルをゲージ側に向けるよう覚えておけばよいのではないか、と。否!このようにしても構わないのは、何だれ人もハンドルをヴァルヴから外したことがない、とはっきり判っている場合に限ります。というのも、信じられないかも知れませんが、ハンドルは4方向どの向きにも取付けられるからなのです。正直なところ、あなたのハンドルがどのように取付けられているかお判りになっているでしょうか。まあ、最高と最低の読みが見つかるまで、ヴァルヴを回し続ければ事足りる、とおっしゃるでしょう。大勢の人達がこの原始的な方法を取っていますが、しかし、夜勤の人や新任の人、あるいは交替の人に言い送るのを忘れることがありますし、そうすると、後を受けた人は簡単に差圧計算することができません。 この事態を解決する唯一の方法は、直読式の差圧計を使用することです。回さなければならないヴァルヴや不安定な指示用突起物などもなく、又スナバーも要りませんし、計算で差を出す必要もありません。ブリティン 83-92 をご覧の上ご一考下さい。GTP-277 ヴァルヴは誤操作のないものです。その出入口のデザインは前述のヴァルヴのものとは全く異なり、又ハンドルのところに操作方法を判り易く指示してあります。そうです。私どものヴァルヴのハンドルは取付けの位置が1ケ所だけになっています。たぶん、これは一つの技術的な突破口とも呼べるのではないでしょうか。